平成30年度 中間管理者研修「人材を活かす力育てる力」の報告

平成30年度の中間管理職研修は合同会社「介護の未来」代表 阿部充宏氏をお招きして、3月8日(金)18時30分から厚木市文化会館で開催しました。年度末の忙しい時期でしたが、加入事業所から34名の参加者が集まり、専門職に求められる力などのお話に耳を傾けました。

篠原会長より開会のごあいさつ

「今日のお話を職場に持ち帰り、各事業所のスタッフの方々と共有していただきたい」とお話がありました。厚木市のケアプラン点検や様々な介護研修などの講師としても活躍されている阿部先生のお話について、「日本語の使い方などについても学びたいと思います。」とご紹介がありました。

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私の失敗談を元にみなさんが考えるきっかけにしてほしい

阿部充宏先生は介護に30年ほど関わり、特別養護老人ホームの施設長をされていました。「私の経験からスタッフの離職などの失敗談を紹介しますので、その中からスタッフに本気で向き合うことの大切さやスタッフの心をつかむためのヒントにつながれば良いと思います」というご挨拶があり、講習が始まりました。

社会的背景と「人材問題」について

現在、国全体で地域包括ケアシステムへの移行を目指しています。10月から特定処遇改善加算が新たに始まり、介護職の報酬が上がるのはよいが、「その給与は利用者さんから頂いている」という感謝の気持ちを忘れず、「介護の質で返そう」とスタッフに伝えていくことが大切です。2025年には「日頃在宅、時々病院」を目指しましょう。更に高齢化が進み人口減少が加速する中で、厚木市民の半数以上が「亡くなる時には在宅でいたい」と考えています。しかし、実際に自宅で最期を迎えられる方は13%にも満たない現状だということを覚えておき、それをどうやったら支えきれるか考えていきましょう。どの市町村なら家で死ねるかということが数値で示されるようになってくるでしょう。病院のベッドが減る中で、希望どおり在宅で過ごし、孤立死することはそれほど不幸なことではないのかもしれません。介護は地元産業です。厚木で育った人間が介護で活躍する環境づくりも大切になってきます。

2035年には全国で79万人の介護人材が不足

人材の枯渇に対して行政は介護報酬を増やしたり、処遇改善する対策ぐらいしかない。福祉の仕事でお金のことを言うと「ボランティア精神が無い」と責められるが、お金によって変えられることはある。人材募集にかけている経費を今働いているスタッフに使うことで、離職を減らす方法も考えられる。新採用が難しいなら今いる人材を大事にするほうが良い。大規模な法人でも役職に就きたくないと考えている職員が多く、その理由は管理職や主任になった途端に何も教えてくれなくなったということをよく聞く。なんでも許せばよいということではないが、辞めていくのを本人のせいだけにしてしまうことが多い。離職率を減らすには社長や管理者が中間層のスタッフに考え方を具体的に示しているかにかかっています。

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(「人材を考える」シートに各自で記入、グループごとにまとめる時間)

 

 

 

 

これからお話しすることは私の失敗談を元に考えた私なりの方法で、必ずそうしたほうが良いということではなく、あくまで参考としてとらえ、それぞれの事業所で良い方法を考えていってください。

1.会社自慢を(あえて)一つだけお願いします。

ぜひ「自分の会社の自慢」を見つけてほしい。ここで働きたい理由(=会社愛)は何か?中間層がいつも考えることでスタッフに伝えられるようになれる。職種は何がしたいと言えるが、ここでなければならない理由を問いかけてみることが大事です。

2.仕事(専門家)の仕方(姿勢)で大事なこと、部下になんと伝えていますか?

私は唯一「正直に仕事しましょう」とだけ伝えてきました。失敗が多く出てくるが大事にはならずに済んでいた。 これはひとつの例で、みなさんがそれぞれ大事にしていることを伝えることが大切です。

3.人材育成に対するあなたのポリシーはなんですか?

私は採用した人間に対して「決して諦めない」ということをポリシーにして、相手が諦めない限り絶対に逃げないようにしていました。
 

 

 

 

 

●中間管理層の立ち振る舞いが離職率を確保する?

※〈 〉内の数字は参加者に当てはまった回答人数

①職場の言葉遣い適切ですか? 〈7〉

・敬語を使っている職場はしっかりしている会社が多い。ちゃんと相手(若い人でも)を社会人として扱っていることで、お互いが尊敬しあえる関係ができる。職場と呑み会などのメリハリは効かせたほうが良い。

②部下を見かけたとき、「どのような言葉をかけていますか?」 〈2〉

・「なんかあったら言ってね」と言っているのをよく耳にするが、「なんか」って相当大変なことしか言ってこないので、「なんかいいことあった?」と聞くことで、お互いに幸せになれる会話ができることが多かった。

③部下に話しかけられたとき、あなたは大忙しのお仕事中だとしたら。 〈2〉

・「後でね」「いつかね」は優しい言葉のようで実現しないことが多いため良くない。「何時にする?」とアポイントをとり、「何分ぐらい必要?」と終わりの時間を決めておくと重要度が予測できる。

④上司は部下を選べませんが・・「あなたは学んでいますか?」。 〈5〉

・いくつになっても専門家として学ぶことで、尊敬される上司であってほしい。本屋(有隣堂)で買った本を読んだあとは机に置いておこう。 ・以前スタッフには「本を買いなさい」と言っていたが、「10分で良いから自分の専門職に関することをスマホで読むように」奨めて、調べる習慣がつくようにしてもらっている。

⑤会議で「一言も話さない職員」を作っていませんか? 〈2〉

・議論して決定しなければただのおしゃべりになってしまう。決めたら行い、行ったら顧みることで会議に意味ができてくる。施設系ではどこで決まって、いつ終わったかもわからないことが多く、スタッフのやる気を削ぐ結果となっている。決定のプロセスを明確にして情報を共有をしっかりすることで会社の統制をとること。

・若いスタッフにも必ず発言させ、参加させることが大事。「〜さんの意見に賛成です。」「素朴な意見ですみません」と言うことから始めて、会議に慣れてもらうことが良い方法。あとは施設長が喋りすぎないこと。

⑥お休みのとり方のルールは?(押しの強い人、大人しい人に偏ってませんか?) 〈10〉

・病欠も「お互い様」と済ませないで、仲間に感謝してることが大事。

・管理職は有給取得や緊急出勤などを勤務表で把握し、しっかり視てあげていることを伝えることも大切。

⑦あなたが頑張りすぎていませんか?(職員の得意を引き出そうとしていますか?) 〈4〉

・これにチェックをつけた人は疲れているので、少し休んで体を休めてください。

⑧仲違いをしている職員を見かけたとき、あなたの行動は? 〈12〉

・そのまま放置しないこと。不満はお互い率直に言うようにして「社会人として解決するように」促していた。

⑨職員の提案や意見を曖昧にしていませんか? 〈4〉

・できないことは曖昧にせずはっきり言うこと。

⑩あなたは職場で「人の批判や法人批判」をしていますか? 〈1〉

・上司や同じ立場の管理職同士で言うのは良いが、部下や新人に言わないように。

⑪あなたは職場で「管理職になるもんじゃない」と言っていませんか? 〈0〉

・言いたいかもしれないけど言わないこと。

⑫「どうしてそう考えたの?」と返していますか? 〈3〉

・時間がないとすぐ答えを言ってしまうことが多いが、自分で原因を考えるようにすることで伸びていく。いつでも答えを求めにくるだけだと素人専門家を育ててします。

⑬あなたは「〜だから」を連発していませんか? 〈0〉

・ネガティブになっていまうので、言い訳に「〜だから」を使って済ませないこと。

⑭辞めたいと言われたときのあなたの対応ルールは 〈12〉

・3回は辞表を受け取らなかった。「辞めないで」と最後まで引き止めた職員は他の施設に移ってから前の職場の悪口を言わない。

⑮あなたは職員との1対1の面接を月に何回していますか? 〈5〉

・職員が疲弊しないようにいつも視て、声をかけていた。職員ファーストは入居者ファーストにつながっていく。

⑯あなたは職員に対して1日に「ありがとう」を何回言っていますか? 〈4〉

・「ありがとう」と言うことで常に感謝を伝える。

⑰最後に・・あなたはいつも笑顔で仕事していますか? 〈6〉

・気楽に話しかけてもらえるような雰囲気をつく1るよう心がけていた。

 

●中間管理層を育てる責任者の振る舞いが組織を強固なものにする。

※〈 〉内の数字は参加者に当てはまった回答人数

①中間管理層とは、御社での定義はなにか(経験年数?資格?人柄?) 〈2〉

②中間管理層を育成する責任者は誰か? 〈2〉

③マネジャーとプレイングマネジャーを同じにしていないか? 〈4〉

④任せる!信じている!は無責任なマネジャー? 〈3〉

⑤「責任を持って」と言うけれど、権限を持たせない責任を負わせていないか? 〈2〉

⑥専門家として、どのように育てていますか? 〈6〉

⑦中間管理層の休みや残業状況を管理者は個別に言えますか? 〈1〉

⑧中間管理層が「宝」になるか「害」になるかは管理者次第。 〈1〉

⑤にあるように、「責任」を持たせるなら必ず「権限(=任命権・経費など)」を与えるようにしてください。 また、中間層の働き方を把握することが大切です。

●阿部の妄言

①副業はだめですか?

②沖縄県(?)の法人と交換研修(慰労)はなしですか?

③企業応援を前提とした就業ってダメですか?

・この業界は仲間3人つくれれば起業できる。「未来塾」では起業も応援している。

・独立を目指すぐらいの職員のほうが今の職場でもやる気がある。

④私の会社に社員を預ける(研修)って有りですか?

・研修の手伝いをすることで、いつもと違う環境を経験することが学びにつながるかもしれない。

・違う環境を知ることでやる気につながることもある。

※6月6日の「未来塾」では個人で介護を学べる研修を行っています。

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(講演終了)
 

 

 

 

 
【閉会挨拶 (副会長 岡島)】

講師を探している中でいろいろ調べていて、この方は「熱そうだ」と感じて阿部先生にお願いしました。本日講演の始まる前に「熱いお話を期待しています。」と言ったら、「みんなが熱くなくては意味ないんだけどね。」とおっしゃっていました。先生の講義を聞いて、何か1つでも変わったらお話を聞いた意味があったのかなと思います。それぞれが持ち帰って、職場で少しでも活かして良くなるようにしていただけたらと思いました。阿部先生、お忙しい中どうもありがとうございました。

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【阿部 先生のプロフィール】

①1990年より従事(社会福祉士・介護福祉士・介護支援専門員)

②介護職・相談職・介護支援専門員・事業管理者・事業部長、特養施設長を8年。(通算27年)

③2015年10月に起業【伊勢原市】

(介護支援専門員法定研修指定機関・小田原市ケアプラン点検受託等)

(ケアプラン点検事業受託 小田原・藤沢・厚木・海老名・伊勢原・綾瀬・鎌倉市)

(人財育成研修及びプロジェクト。事業経営・質の向上戦略サポート等)

④その他

・神奈川県介護支援専門員協会  相談役

・国際医療福祉大学 看護学部 非常勤講師  (担当:ケアマネジメント論)

・介護の未来「縦横ななめの会」 代表

セミナーやオフ会や被災地視察等、職種も業界も問わない会

介護の未来ホームページ  http://kaigonomirai.net/

介護の未来(電話)0463-38-0210