介護職員研修「介護職員が知っておきたいハラスメント対応」レポート

令和6年2月16日(金)、講師に介護弁護士の外岡潤先生をお招きして「介護職員が知っておきたいハラスメント対応」研修会を開催しました。会場のアミューあつぎには仕事を終えた会員20名が集まりました。18時30分に開始の予定でしたが交通事情の関係で先生の到着が少し遅れたため、お待ちしている間には会員同士の情報交換などで話しの輪が広がっていました。

先生が無事到着され、セキト介護ステーションの相澤さんの司会で研修会が始まりました。

 

岡島副会長からご挨拶があり研修開始

「お忙しい中、多くのみなさんに集まっていただきありがとうございます。実りある時間になるよう最後までどうぞよろしくお願いします」とご挨拶がありました。

 

 

 

 

 

外岡潤先生からご挨拶と自己紹介

「こんばんは、到着が遅れてしまい申し訳ございません。今日のテーマはハラスメント対応ということでお話します。最近はサ高住のお客様やデイサービスの利用者さんが職員を困らせたり、家族からのクレームになったりというご相談が多く寄せられるようになりました。私は“介護・福祉系法律事務所“おかげさま”を設立して介護現場のトラブル解決のお手伝いをしております。平和的に話し合って快活したり、トラブルを事前に予防して、どのようにしてハラスメントから職員を守ってゆくかについてお伝えしていきます」と自己紹介があり、お話が始まりました。

 

1.クレームとハラスメントの違いや適切な対処方法

クレームには理由があり、要求に対応して目的が解決すれば収束しますが、ハラスメントはいくら対応しても満足せず、暴言などクレーム自体が目的になってしまうことがあるため、適切な謝罪の方法や相手が興奮しているときの対処方法の紹介がありました。ハラスメントには①身体的暴力、②精神的暴力、③セクシャルハラスメントなどの種類があり、利用者や家族から過度なクレームや要求がある場合に“カスタマーハラスメント=カスハラ”になると説明があり、具体的な例をあげてご解説いただきました。ハラスメントへの対処方法についてどう考えるか問いかけがあり、“程度がひどい場合は毅然と対処するべき”という意見が一番多い結果となりました。カスハラに対処すべき場合の意識や方法を職場で統一しておく必要があることや、雇用法人は職員に対して「安全配慮義務」を負っていて、職員を孤立させないことが大切ということを学びました。

 

 

 

 

 

2.精神疾患や認知症施設防衛の最終手段は「契約解除」

ハラスメントには「クレーム段階」→「職員に対する人権侵害」→「サービス継続不能(犯罪)」などの段階があり、それぞれに適切な対処方法があることを教えていただきました。また、「利用者が悪くないとわかっていても、職員の人権も守らなければならないので、簡単に割り切れないケースもある」「相手が責任無能力者であっても正当防衛は成立する」「申し入れして改善しない場合には契約解除しなければならない場合もある」といった事例を紹介していただきました。いずれにしても「職員個単位」「施設単位」で抱え込まず、上司や行政に相談することが大切ということでした。

 

3.トラブルやクレーム対応には「コンプライアンス」を

目には見えないけれど自分たちのとる行動の「正しさ」の根拠となるのが「コンプライアンス」です。事業体や個人が法律や社会規範を遵守していれば、度を越したクレームや要求を恐れなくてもよいということでした。契約を交わす際に「権利と義務」を確認し、お互いに約束を守るという姿勢が大切になります。「だめなものはダメ」と毅然とした対処が必要な場合もあります。日々の介護日誌やケアプラン、会話を記録したメモなども証拠となるので、いざという時のために残しておきましょう。

 

4.虎の巻「こうきたらこう返す」

クレームや要求への対処は「争わず、相手の気持を受け止めてから鎮める」という指針に基づいて行うことが大切ということでした。介護施設やデイサービス、訪問など様々な場面やケアマネジャーやヘルパーなどの違いによる対処方法をまとめたシート「虎の巻」を配布して頂き、具体的な事例を説明していただきました。

 

 

 

 

 

5.事故が起きたときの「謝罪」やとっさの場面の対処方法

「謝罪」には①不快な思いをさせたことへのお詫び→ ②道義的な責任を認める意思表明→ ③法的責任を承認する という3段階があり、①②は法的な責任が確定するわけではないので、とりあえず謝罪しても大丈夫ということでした。
また、相手が興奮したり怒鳴っている時には「なんで?」と聞き返したり「だから何?」と言い返すだけでも相手の興奮が収まり、有効だそうです。「お帰りください」と言っても帰らない場合には「不退去罪になります」といった言葉を言うだけで、“法律を知っている感”が出て状況が良くなることもあるそうです。脅迫罪、恐喝罪、強要罪、侮辱罪などの刑法用語を覚えておくとよいそうです。

 

6.ハラスメントを起こさせないための工夫

その他、①ルールを決めて、②ルール通り動き、③記録する という「コンプライアンスの管理術」や、ケアマネジャーやヘルパーはなんでもやってあげれば良いというわけではなく「役割の範囲をはっきりさせることが大切」といったハラスメント予防策についてご紹介がありました。また、ハラスメントが起こった時に相手に止めてもらうための「申し入れ書」の文章例や「契約書の書き方」についても教えていただきました。

 

 

 

 

 

★外岡先生からまとめの言葉

優良な職員を辞めさせないために、「相談しやすい体制」「こまめな情報共有とインタビュー」「現場の人間関係をモニタリング」を行い、職員を孤立させないことが必要であることを学びました。最後に「トラブルになりそうな時や不安なことは“困る前に”弁護士に相談して手を打つことが、安心してサービスを提供できることにつながるので、“こんなことを聞いてもいいのかな?”と迷わずにご相談ください」ということでした。
また、「セミナー・研修などの情報や無料のメールマガジン、ユーチューブでトラブル解決チャンネルをしているので、よろしければご登録ください(※以下にリンクあり)」とご案内がありました。

 

閉会のことば(セキト介護ステーションの相澤さん)
本日、学んだことを職場に持ち帰り、職員と共有し利用者様が気持ちよく過ごせるようにお役立てください。
最後に外岡先生にもう一度拍手をお願いします。(拍手)

 

【外岡潤事務所のホームページ】
介護施設・事務所様向けトラブル解決ページ
https://kaigo-trouble.com/

ユーチューブで無料動画を配信中
弁護士外岡潤が教える介護トラブル解決チャンネル
https://www.youtube.com/user/sotooka