令和7年度 第1回介護職員研修 杉山DRから学ぶ「認知症対研修」レポート

令和7年10月28日(金曜日)アミューあつぎ(6階)ルーム601に川崎幸クリニックの院長で認知症ケアの専門家である杉山 孝博 氏 を迎え「認知症対研修」を行いました。会員事業所などから33名の参加者が集まりました。18:30に研修部会 廣石さんの司会で研修が始まりました。

 

来住会長からご挨拶
みなさんこんばんは。今回は当協会では久しぶりの認知症がテーマの研修です。介護の職場で働く中で避けては通れない内容です。認知症は様々なケースがあり対応方法も多様です。本日はだ第一線でご活躍されてる杉山先生をお招きしてお話し頂きます。研修だけで全てを解るというわけにはいきませんが、認知症を理解するきっかけとして、しっかり学んで帰ってほしいと思います。それではよろしくお願いします。

 

 

 

 

医師 杉山孝博先生(川崎幸クリニック院長)のお話が始まりました
私の病院では内科の診療に加え、46年前から訪問診療を初めました。当初から医療はサービス業であるという思いがあります。そして、サービスを受ける側のメリットが優先されるべきと考えております。在宅でご家族の方が一生懸命お世話されている中で病院に連れてくることは困難なことです。私たちが訪問すれば簡単に診療を受けることができます。在宅で看取ることも含め、長年訪問診療に取り組んでまいりました。
認知症の問題に関わり始めたのは約45年前です。当時は制度もなく役所に行っても窓口もない中で、せめて「家族同士で励まし合う会を作ろう」ということになり、会の立ち上げからずっと関わってきました。活動の中で認知症介護で最も大変なのは「認知症の症状に対する理解を得ることが難しい」ということに気づきました。そして、症状についてわかりやすく伝えるということが私のテーマになりました。

「認知症」と「認知症の人」をどう理解するか
認知症基本法は、認知症の人が尊厳を保持しつつ認知症の人を含めた国民一人一人が 相互に人格と個性を尊重しつつ支えあいながら共生する活力ある社会の実現を目的に2024年の1月に施工されました。国や地方公共団体に認知症対策を義務化 するとともに、国民にも認知症に関する正しい知識や理解を深め、共生社会の実現に寄与することを求めています。
このあと杉山先生から個別の具体的な例を交えてお話し頂きました。詳しく知りたい方は参考文献などをご購入ください。

 

 

 

 

会員事業所からの事前質問に対する杉山先生のご回答

Q:若年性認知症は年配の方のように4つのカテゴリーに分けられますか?
A:65歳未満に発症した認知症を“若年性”と分けています。脳腫瘍や血管性などが原因になっていることがあるので、高齢者と割合が違いますが分け方は同じと考えて良いです。

Q:ご本人が嫌がったりして服薬などのタイミングを守れないことが有ります。どうしたらよいでしょう?
A:時間の制約がある中では難しいと思います。無理やり飲ませるのでなく、家族などに協力してもらって、食後などの(指示された)タイミングでなくても、服薬していただけば良いです。

Q:訪問ヘルパーでスムーズにケアを受けてもらうのに、いわゆる「ちょっとしたウソ」をつくことがあります。これでいいのかな?と迷うことがあります。
A:ご本人の世界に合わせるということで、それでいいと思います。むしろ演技することを上手にやってほしいと思います。

Q:夜間に眠らず歩きまわる利用者さんにはどうしたらいいいですか?
A:ご本人は昼間に目が開いていても半分は眠っている状態なので、無理やり寝かせなくても健康的には大丈夫です。暗くすると不安になるので、明かりをつけておくなどして恐怖感をやわらげるようにしてください。

Q:飲み物を飲んでくれない利用者さんにはどうしたらいいですか?
A:普通の食事をしていればある程度水分は足りているので、3時に好きなお茶をすすめるくらいで、無理やり飲ませようとしないでも大丈夫です。

Q:食事や服薬など声かけ誘導しているが、なかなか予定したとおりの時間で進まない。
A:人によっては時間のかかることが普通なんだということを理解して、多様性にあわせて対応してほしいと思います。

Q:「物盗られ妄想」のある方への対応が難しいです。どうしたらいいですか?
A:権威のある方から説明したり、ちゃんとした預り証や貯金通帳を見せることで「安心できる状況」をつくり落ちついた例があります。

杉山先生からまとめのお話

認知症の方はある時期、大きな声を出したり周囲に迷惑をかけたりすることがありますが、これは認知症の症状なのだと理解していただくことが大切です。症状を止めることは難しいですが、ほっておけば良いことも多くあります。
本日はいつも2時間以上かかる講座を1時間半にまとめたので、少し駆け足になりましたが、ご清聴ありがとうございました。

 

 

 

 

研修部会の廣石さんから閉会のあいさつ
杉山先生ありがとうございました。
介護の仕事をしていく中で、日々悩んだり対応に困ることがあると思います。今日お話いただいた認知症バリアフリー化や周りの人の理解が本当に大切だと思いました。対応を適切に行うことで、認知症の進行を遅らすことにもつながるんだと感じました。「利用者さんに共感すること」などすぐにできることもお聴きしましたので、各事業所の戻って参加されなかった方にも共有して頂き、今後の心のこもったサービス提供につなげていただければと思います。資料の最後にある参考文献やWEBサイトも参考にしてみてください。
いま一度先生に盛大な拍手をお願いします。(拍手)

※講演終了後、ご家族に読んでいただくとよいことをまとめたパンフレットを希望者にはお分け頂きました。

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♥ 研修参加者のアンケートより(一部抜粋)

【本日研修内容について】※質問に対し複数回答している方がいるため、参加者数より多い回答があります。

・新たな学びがあった・・・23名
・自分の知識や技術を再確認する機会として良い・・・14名
・知っている内容ばかりだった・・・0名
・その他・・・1名(もっと早く知っていれば両親の介護もう少しくらい楽だったかなと)

 

【受講の感想】

・勉強になりました。
・とても楽しくお話が聞けました。また聞きたいです。ありがとうございました。
・最後の質問に対する答えをゆっくり聞きたかった。
・先生の説明、例えば・・・という話がとても参考になりました。もっと聞きたかったです。
・とってもいい研修でした。

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《参考文献》
① 杉山孝博著「再改訂認知症の理解と介護
―認知症の人の世界を理解しよい介護をするためにー」
(1冊 350円+送料 125円)
問い合わせ:認知症の人と家族の会神奈川県支部
電話:045-548-8061
FAX:045-548-8068
※住所・氏名・電話番号・ 希望冊数を記入しファックスで注文

② 杉山孝博著「マンガでわかる 認知症の9大法則と1原則」(法研)
③ 杉山孝博監修「認知症の人の気持ちと行動がわかる本」(講談社、2025年4月発行)
④ 杉山孝博監修「認知症の人のつらい気持ちがわかる本」(講談社)
⑤ インターネット閲覧・ダウンロード
川崎幸クリニックHP「院長ご挨拶」(外部リンク)
https://saiwaicl.jp/outline/message.php
記事の例:「知ってますか?認知症」「認知症と自動車運転」「認知症の早期診断、医療機関受診のための工夫」「認知症と入浴拒否」「胃瘻についての考え方」など